「海北友松」関連ブログ記事　Art & Bell by Tora　

April 17, 2017, 12:58 am

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今週の日曜美術館は「桃山　孤高の巨匠　海北友松」であり、京都国立博物館で「海北友松展」が始まっている。そこで毎日新聞社総合事業局事業部（06-6346-8391）に電話をかけて、「海北友松展図録」を送ってもらうことにした。

その後、ホームページ「美術散歩」のブログ検索を行って、今までに見た「海北友松作品」をピックアップしてみた。結果は以下のとおりである。図録が残っているものでは、その「海北友松作品」を見直してみることとする。

・戸方庵井上コレクション名品展：板橋区立美術館　図なし 2006.12　ブログ
《漁村夕照図》

・近代の屏風絵―煌きの空間（前期）　＠泉屋博古館分館 　図あり 2009.1　ブログ
《日吉山王祭礼図屏風》海北友雪・妙心寺（前期）　＠東京国立博物館　図あり　2009.1　ブログ
《琴棋書画図屏風》・妙心寺（後期）　＠東京国立博物館　図あり 2009.2　ブログ
《花卉図屏風》右隻↓《寒山拾得・三酸図屏風》
《雲龍図襖　麟祥院方丈障壁画のうち》 海北友雪

・博物館に初もうで　2013年　その2　＠東京国立博物館　図あり 2013.1　ブログ
《琴棋書画屏風》・栄西と建仁寺　前期　＠東京国立博物館 　図あり 2014.3　ブログ
《竹林七賢図》《琴棋書画図》
《山水図》
《花鳥図》
《雲龍図》《山水図襖》
《花鳥図襖》
《琴棋書画図屏風》
《人物花鳥押絵貼屏風》

・栄西と建仁寺　後期　＠東京国立博物館　図あり 2014.4　ブログ
《竹林七賢図》
《琴棋書画図》
《山水図》
《花鳥図》
《雲龍図》《山水図襖》
《花鳥図襖》
《琴棋書画図屏風》
《松竹梅図襖》

・海北友松・俵屋宗達・尾形光琳　＠東京国立博物館　図あり 2014.4　ブログ
《山水図屏風》（右隻）《琴棋書画図屏風》

・ドラッカー・コレクション　珠玉の水墨画　＠千葉市美術館　図あり 2016.6　ブログ
《芦に小禽図》・月ー夜を彩る清けき光　＠松濤美術館　記念講演会　図あり 2016.11　ブログ
《洞庭秋月図》・クリーブランド美術館展　＠東京国立博物館　図あり 2014.1　ブログ
《松に椿・竹に朝顔図》伝・海北友松・徒然草―美術で楽しむ古典文学　＠サントリー美術館　図あり 2014.6　ブログ
《徒然草絵巻》海北友雪《海北友松夫妻像》海北友雪
《総持寺縁起絵巻》海北友雪《一ノ谷合戦図屏風》海北友雪
《秋蓮白鷺図》海北友雪

今回の「海北友松展」のプレスレリースによると、《月下渓流図屏風》（↓）も展示されるという。美術散歩　管理人　とら

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「海北友松」代表作

April 17, 2017, 11:55 pm

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Wikipediaに載っている「海北友松の代表作」は以下の通りだが、わたしの関心事は「①自分が過去に見ているか否か」と「②見ていない作品は今回の京博の展覧会に (a)出ている か (b)出ていない か」の2点である。

•建仁寺本坊大方丈障壁画（掛軸に改装）全50面　重要文化財 京都国立博物館寄託
依鉢の間「琴棋書画図」10面　既視＠栄西と建仁寺展

檀那の間「山水図」8幅　既視＠栄西と建仁寺展

室中「竹林七賢図」16幅中10幅 　既視＠栄西と建仁寺展

書院の間「花鳥図」10幅（内2幅消失）中7幅　既視＠栄西と建仁寺展

礼の間「雲龍図」8幅　＠栄西と建仁寺
•琴棋書画図屏風（京都・建仁寺塔頭霊洞院） 重要文化財　京都国立博物館寄託　既視＠栄西と建仁寺展

•松竹梅図（京都・建仁寺塔頭禅居庵）襖全12面 重要文化財　既視＠栄西と建仁寺展

•浜松図（宮内庁 三の丸尚蔵館）六曲一双 金地著色　出展中＠海北友松展（京都国立博物館）

•網干図屏風（宮内庁 三の丸尚蔵館）六曲一双 金地著色　出展中＠海北友松展（京都国立博物館）

•花卉図屏風（京都・妙心寺）六曲一双 紙本金地着色 重要文化財　京都国立博物館寄託　既視＠妙心寺展

•琴棋書画図屏風（京都・妙心寺）六曲一双 紙本金地着色 重要文化財　京都国立博物館寄託　既視＠妙心寺展

•三酸・寒山拾得図屏風（京都・妙心寺）六曲一双 紙本金地着色 重要文化財　既視＠妙心寺展

•四季山水図屏風（MOA美術館）八曲一双 重要文化財　出展中＠海北友松展（京都国立博物館）

•楼閣山水図屏風（MOA美術館）六曲一双 紙本墨画 重要文化財　出展中＠海北友松展（京都国立博物館）

•飲中八仙図（京都国立博物館）六曲一隻 重要文化財 1602年　出展中＠海北友松展（京都国立博物館）

•雲龍図右隻（京都・北野天満宮）六曲一双 重要文化財　出展中＠海北友松展（京都国立博物館）

•婦女琴棋書画図（東京国立博物館）六曲一双 紙本著色 重要文化財　既視＠東博常設展 2014年

•山水図（東京国立博物館）六曲一隻 紙本墨画 重要文化財　既視＠妙心寺展＆博物館に初もうで2013年＆東博常設展 2014年

•放馬図屏風（松尾寺）六曲一双 紙本墨画　出展中＠海北友松展（京都国立博物館）

•禅宗祖師・散聖図屏風（静岡県立美術館）六曲一双 紙本墨画　出展中＠海北友松展（京都国立博物館）

•琴棋書画図（ワシントンD.C.・フリーア美術館）六曲一双 紙本墨画　非出展＠海北友松展（京都国立博物館）

•月下渓流図屏風（カンザスシティ・ネルソン・アトキンズ美術館）六曲一双 紙本墨画淡彩　出展中＠海北友松展（京都国立博物館）美術散歩　管理人　とら

「海北友松」展覧会図録

April 18, 2017, 2:17 am

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昨日、大阪の毎日新聞事業部に注文した「海北友松展」の図録が、1日で東京に着いてしまった。便利な宅急便のお陰である。

費用は、図録2,500円に、送料・代引き手数料・税を加えて、合計3,524円であるから、新幹線での京都往復代に比べるまでもない。

この図録の重さは1.5Kg。以前に京博で買った狩野永徳の図録は1.4Kg、狩野山楽・山雪の図録が1.6Kgであるが、いずれもかなり重い。

早速に写真を撮った。

海北友松関連の図録と京博の狩野永徳展図録・山楽－山雪展図録も並べて撮ってみた。昨日、この図録を注文してから、ちょっと勉強して、海北友松関連のブログ記事を２本アップした。①「海北友松」関連ブログ記事　Art & Bell by Tora ⇒こちら　
②「海北友松」代表作 ⇒こちらあとは、今日送られてきた図録をじっくりと読み込んで、さし当り今週の「日曜美術館：桃山　孤高の巨匠　海北友松」に備えたい。

美術散歩　管理人　とら

季節の花　＠自宅の庭 2017/4/19

April 18, 2017, 6:04 pm

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満開の桜が葉桜となり、暖かくなって緑が増えてきた。庭の花にも新顔が登場しつつある。

海老根蘭

白山吹皐月 or 霧島躑躅
躑躅（大紫躑躅）
花の名知らず美術散歩　管理人　とら
　

24年ぶりにボイマンス美術館の「バベルの塔」がやってきた

April 19, 2017, 7:36 pm

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ブリューゲルの「バベルの塔」は2点ある。「ウィーン美術史美術館蔵のもの（↓、2007年実見）」と「ボイマンス美術館蔵のもの（↓↓、1993年実見）」である。わたしは幸い両者の前に立つことができた。

ボイマンス美術館所蔵のものを見たのは、24年前。正確には1993年10月10日、今は無き「セゾン美術館」で見た。その展覧会の名称は「ボイマンス美術館展　バベルの塔をめぐって」。会期は1993年10月8日－12月26日だから3日目に見ているのである。その際のブログ記事はこちら、ホームページ記事はこちらである。

今回2007年4月18日から「ボイマンス美術館所蔵　バベルの塔展」が開かれている。24年ぶりにボイマンスの「バベルの塔」に再会できるのである。楽しみである。
HP

ボイマンス美術館蔵「バベルの塔」展　＠東京都美術館

April 20, 2017, 8:47 am

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2017年4月18日から始まったこの展覧会。3日目に見に行ってきた。

ボイマンス美術館蔵の「バベルの塔」を24年前に見た時も、やはり3日目に見に行った。このことについては、こちらに書いた。

今回の展覧会副は、副題「16世紀ネーデルランドの至宝ーボスを超えて」のように、16世紀ネーデルランド美術全体からも展示されているが、なんといってもボスの《聖クリストフォロス》・《放浪者》とブリューゲルの《バベルの塔》の3点が中心であることは間違いない。以下、今回の展覧会の構成に従って、その全体像を述べていく。

(LBF)

Ⅰ.16世紀ネーデルランドの彫刻：　お気に入りはアドリア―ン・ファン・ウェーセル周辺の彫刻家《受胎告知の聖母》1460年頃　オーク材　と　作者不詳《十字架を担うキリスト、磔刑、十字架降下、埋葬廼ある三連祭壇画》1500年頃　胡桃材。

Ⅱ．信仰に仕えて：　ディ―リク・バウツの《キリストの頭部》1470年頃のように個人が信仰のために所有していたものは良く残っているが、作者不詳《斬首のために連れ去られる聖カタリナ》1460－70年のように教会などにあったものは保存状態が良くないものが多い。

Ⅲ．ホラント地方の美術：　お気に入りは、ルカス・ファン・レイデンの《ヨセフの衣服を見せるポパテルの妻》1512年頃　と　ヤーコブ・コルネリスゾーン・ファン・オートザーネンの《聖カタリナ》表面・《ノルトウェイクの聖ヒエロニムス》裏面　1916年頃。

Ⅳ．新たな画題へ：　宗教画から風景画への流れであり、これを先導したハンス・メムリンクの《風景の中の二頭の馬》1490年頃、次いでヨアヒム・パティニヨールの《牧草を食べるロバのいる風景》1520年頃や《ソドムとゴモラの滅亡があるう風景》1520年頃の他に、ヘリ・メット・デ・プレスの《聖クリストフォロスのいる風景》1540年頃、マールテン・ファン。ヘームスケルクの《オリュンポスの神々》1556年、ヤン・ファン・スコーレルの《学生の肖像》1531年がお気に入り作品。

(1F)

Ⅴ．奇想の画家ヒエロニムス・ボス
・ヒエロニムス・ボス《聖クリストフォロス》伝承ではカナン出身でオフェロスは、隠者のもとを訪れ、イエス・キリストにより親しく仕える方法を問うた。隠者は人々に奉仕することがその道であるといい、流れの急な川を示して、そこで川を渡る人々を助けることを提案した。レプロブスはこれを聞き入れ、川を渡ろうとする人々に無償で尽くし始めた。

ある日、小さな男の子が川を渡りたいとレプロブスに言った。彼があまりに小さかったのでお安い御用と引き受けたレプロブスだったが、川を渡るうちに男の子は異様な重さになり、レプロブスは倒れんばかりになった。あまりの重さに男の子がただものでないことに気づいたレプロブスは丁重にその名前をたずねた。男の子は自らがイエス・キリストであると明かした。イエスは全世界の人々の罪を背負っているため重かったのである。川を渡りきったところでイエスはレプロブスを祝福し、今後は「キリストを背負ったもの」という意味の「クリストフォロス」と名乗るよう命じた。

同時にイエスはレプロブスが持っていた杖を地面に突き刺すように命じた。彼がそうすると杖から枝と葉が生えだし、みるみる巨木となった。後にこの木を見た多くの人々がキリスト教に改宗した。この話は同地の王の知るところとなり、クリストフォロスは捕らえられ、拷問を受けたあとで斬首された。

この絵をよく見ると、恐ろしいことに、殺した熊を吊るしている猟師がいる。熊の胸に刀が刺さり、そこから血が垂れている。また、壊れた瓶にハシゴがかけられていて中には火が見え、瓶の先端には小人の姿が見える。細い枝の先のハチの巣に手を伸ばす別な小人が描かれている。・ヒエロニムス・ボス《放浪者》この男は旅の行商人。背負っている籠には商品の毛皮が掛かっており、籠の中にも商品が入っているのだろう。服には穴が開いているし、片足は靴を履いているが、もう一方はスリッパである。貧しい生活ぶりがうかがえる。 この男は振り返って見ている先には、古びた娼館が建っている。屋根の上には棒にとりつけた花瓶、鳩の出入りできる屋根、白鳥の看板が見える。

窓から顔を出した女が男をび込んでいたり、入り口には抱き合う男女がいたり、路地には小用を足している男がいる。旅の行商人は、この娼館に入りるか止めるか迷っている。あるいは入ってしまったことを後悔しているのかもしれない。いろいろな場面で人間は選択を迫られし、選択してしまったことを後悔しても無益である。

この八角形の中の丸い部分は鏡のようである。見ているのは自分だが、鏡に写っているのは、優柔不断でこころ貧しい男～自分自身～である。

Ⅵ．ボスのように描く：ボス自身は版画制作に興味を持っておらず、現在残っているボス様の版画はボスの工房あるいは後継者のものと考えられる。

お気に入りは、ヒエロニムス・ボス（彫板師不詳）《樹木人間》1590－1610年頃　エッチング。Ⅶ．ブリューゲルの版画

・ピーテル・ブリューゲル1世（彫板：フランス・ハイス）《アントウェルペンのシント・ヨ―リス門前のスケート滑り》1558年頃　エングレーヴィング【参照】ブリューゲル　版画の世界　＠BUNKAMURA　でも見た版画《聖アントニウスの誘惑》《大きな魚は小さな魚を食う》
《大食》《野ウサギ狩り》 《冥府に下るキリスト》
《魔術師ヘルモゲネスの転落》
(2F)

Ⅷ．「バベルの塔」へ

ブリューゲルの《バベルの塔》は3点あったが、1点は失われ、現在ウィーン美術史美術館とボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館（ロッテルダム）の2点だけが残っている。ウィーンのもの（1563年）がボイマンスのもの（1565年頃）より先に描かれ、ウィーンのもの（114 x 155)がボイマンスのもの(59.9 x 74.6)より大きい。

この画を描くにあたっては、ローマのコロセウムが参考にされたということで、ヒエロニムス・コックの版画《コロセウムの眺め》1551年とマールテン・ファン・ヘームスケルクの版画《ローマのコロセウム》1572年が出ていた。

ブリューゲルの《バベルの塔》は、いずれも塔の建設を描いているが、その崩壊を描いたヒエロニムス・コックの版画《バベルの塔の崩壊と人々の離散》1569年も見ることができた。

・3DGC映像センター：《バベルの塔》の外部と内部を7分半の映像で見ることができる。空いていたので快適な椅子に坐って堪能できた。・東京藝術大学COI拠点複製画「バベルの塔」コーナー

《バベルの塔》のクローン文化財（高精細複製画）、縦横がそれぞれ実物の300パーセントという大きさのものが、実物と同じ展示室に展示されている。なお、上野の「東京藝術大学COI拠点 Arts & Science LAB,1F エントランスギャラリー」では、《バベルの塔》を3メートルを超える大きさで立体化し、プロジェクションなども使用して、昼と夜、それぞれで異なる塔の様子を生み出し、新たな鑑賞体験を提示するとのことである。

美術散歩　管理人

大納言小豆

April 20, 2017, 3:16 pm

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　これは、以前のブログの抜粋である。

　温かい「大納言汁粉」↓が美味かった。明治神宮宝物殿では汁粉の名前も位が高い。

　ところで、大納言小豆とは本来は丹波の小豆のこと。徳川幕府は多くの小豆を比較し、煮ても腹が割 れない丹波の小豆を正三位の大納言は殿中 で抜刀しても切腹しないですむことから大納言小豆と名付けた。ちなみに江戸幕府での大納言は尾張徳川家と紀州徳川家のみである。

　同じ御三家でも水戸徳川家は従三位の「中納言」。中納言の唐名は「黄門侍郎」略して「黄門」だから、水戸藩主・権中納言である徳川光圀は「水戸黄門」と呼ばれており、仮に殿中で抜刀すれば、従五位上の浅野内匠頭と同じ運命を辿ることになる。

　ところで、今日飲んだ大納言汁粉は北海道産の小豆を使っていた。最近では、煮ても腹割れのしない大粒の小豆をすべて大納言小豆と呼んでいるらしい。

　江戸時代には「大納言」より小粒で「中納言」、「少納言」と名付けられた品種もあり、現在も一部地域に残っているとのことである（参照）。

　美術散歩　管理人　とら

大英自然史博物館展　＠ぶらぶら美術館・博物館

April 21, 2017, 6:39 pm

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国立科学博物館で開催中（2007.3.18∸6.11）の「大英自然史博物館展」が、4月21日の「ぶらぶら美術館・博物館」で紹介された。

国立科学博物館の篠田謙一副館長と門馬鋼一鉱物化学研究グループ研究員の解説がとても分かりやすかった。

以下は番組のメモであるが、放送の動画はこちらで見られる.。

篠田謙一副館長の解説は次の言葉で始まった。この展覧会のコンセプトは、大英自然史博物館は①どうやってできたか（過去）、②今なにをやっているか（現在）、③将来どうなるのか（未来）を示すことである。【ハンス・スローン（1660年 - 1753年）】医師で収集家。90歳まで生きた。没後、彼が収集した7万点以上の標本をイギリス政府が買い取り、これが大英博物館の基礎となった。カカオを輸入しチョコレートミルク飲料を発明したこと、中国茶を輸入して紅茶喫茶の礎を作ったことでも知られ、ロンドンのスローン・ストリートにその名を残している。番組ではスローンが患者さんからもらったという「印度水牛の角」も紹介された。18世紀には「万物は神が創った」とされ、神の意志を知るために多くのものが収集された。最初に「極楽鳥」が入ってきた際には、脚が切られていたので、この鳥は足のない鳥で 一生飛んでいると考えられた。

【リチャード・オーウェン（1804‐92）】イギリスの生物学者・比較解剖学者・古生物学者。大英博物館に自然物が増えて置き場所がなくなったので、別の建物を作って自然史のものだけを集めようとしたのが大英自然史博物館のはじまりで、オウエン自身が大英自然史博物館初代館長に就任した。オウエンは「モア」の大腿骨のごく一部を見て、その全身骨格や飛べない鳥であることを予測できるほど優秀な比較解剖学者だったが、政府から金を出してもらっている手前、「生物は神が創ったもの」と言わざるをえず、ダーウィンの進化論に猛烈に反対していた。

【世界で初めて製作された地質図】一流の測量技師で、後に「イギリス地質学の父」として知られるようになったウィリアム・スミスが制作した「イングランドとウェールズ及びスコットランドの一部の地層の描写図」（右）と「ウィルトシャーの地質図」（左）が出ている。

ウィリアム・スミスは、イギリス中を旅するうちに、特徴的な化石を含む「地層」が地域ごとに特徴ある分布をしていることに気づき、「地層」が分布する「地質図」を世界で初めて作成した。土地の利用、災害防止、資源の探索、学術資料、環境対策などに応用されるようになった「地質図」の画期的な第一号である。

聖書では地球の歴史は「ノアの方舟以来6000年である」とされているが、ウィリアム・スミスは地質図からみて地球の歴史はこれよりもはるかに長いことに気づいた。

【種の起源】チャールス・ダーウィン（1858‐59）：ガラパゴス諸島の鳥・コガラフィンチ（ダーウィンフィンチ）の嘴の形が違うことや帰国後に行った鳩での実験結果から、「環境の違いによって生物の形が異なる」という適者生存に基づく進化論を考えた。今回「種の起源」の直筆原稿が出展されている。1859年に初版が出版された「種の起源」はすぐに売り切れてしまった。

【始祖鳥】今回、ドイツのソルコホーフェンで150年前に発見された化石が、大英自然史博物館から初めて外に出て、日本までやって来た。

この化石は二つに割られているが、一方に始祖鳥の姿がよく残っている。「羽」があるから鳥であり、先に羽が付いた「尾」もあるので爬虫類との中間であるともいえるが、「羽」があるため定義上「原始的な鳥」すなわち「始祖鳥」と呼ばれている。

2004年に残っている「頭部のCTスキャン」を行い、視覚部分や三半規管が発達していたことから、「始祖鳥は飛んでいた」とされている。反対側の化石には「歯の跡」が認められるが、定期上は「鳥には歯がない」とされているので、「始祖鳥は進化の過程にあるもの」と考えられる。

「始祖鳥の標本化石」は世界に12点しかなく、始祖鳥の標本化石が来日したのは、1986年のベルリン標本、2011年のサーモポリス標本に次いで3度目。今回のロンドン標本は、ドイツで発見され、発見者の医師が娘の結婚式の費用捻出のためイギリスに売却した。

【呪われたアメジスト】
所有者に多くの不幸をもたらしたと伝えられる紫水晶。周囲には呪い消しの金具が多数嵌められている。アメジストはそれほど高価な宝石ではなく、所有者の娘がイギリス政府に寄付したとのことである。

【パンクス花譜集】イギリス人海軍士官ジェームズ・クックが率いたエンデバー号による探検航海（1768～71）の目的は「地球と太陽の距離を測る」ことだったが、船には多数の植物学者や動物学者が乗っていた。

キャプテン・クックが率いた探検航海で、植物学者のジョセフ・バンクスやダニエル・ソランダーらは、オーストラリア・ニュージーランド・アフリカ大陸で固有植物を採取した。植物を押花として持ち帰ると色が変わってしまうので、バンクスは記録画を描くため女性博物画家シドニー・パーキンソン（1745頃-1771）を雇いエンデバー号に乗せた。

シドニー・パーキンソンは、標本をラフにスケッチして、重要部分に彩色を施した。この彼女が船中で赤痢に罹り、26歳で早世したため、バンクスは別の画家にスケッチを完成させて白黒写真を撮り、モノクロ印刷させた。1980年代になるとカラー印刷が可能なった。第1回の太平洋航海の植物標本が花譜集として出版するためには約200年の年月が必要だったのである。

なお、2014/12/23－2015/3/1に「Bunkamura25周年記念」として「キャプテン・クック探検航海とバンクス花譜集展」が開かれた。【昭和天皇の粘菌標本】

粘菌はアメーバ的運動をするため動物的でありながら胞子を作るため植物的でもあるという特殊な生物である。かねて南方熊楠と親交があった昭和天皇は、皇居で収集した粘菌標本をロンドンに送られたが、これが新種と認定され、「imperial・・・」と命名された。粘菌はかつて南方熊楠が興味を抱いて研究したことで有名で、南方が和歌山県で採集した粘菌標本はロンドン自然史博物館の粘菌学者グリエルマ・リスターによって新属新種として記載されている。昭和天皇も関心を持って粘菌研究を手掛けておられた。

【日本発の世界的な鉱物標本】愛媛で発見された高品質のアンチモナイト(輝安鉱)。愛媛県西条市の市之川鉱山から産したこの標本は、1878年のパリ万博でメダルを獲得している。これをディーラーを通じて1884年に大英自然史博物館が購入した。市之川鉱山はすでに閉山したが、当時は世界一大きく美しい輝安鉱の産地として海外にも知れ渡っていた。中でも大型の結晶が母岩に多数付いた標本は極めて希少、その標本が130年ぶりに日本に戻ってきている。この展覧会には、山梨で発見された「日本式双晶」も展示されている。これは2つの水晶がひとつに合体したもので、ドイツのゴールドシュミットが「日本式双晶」と命名した。

【三個の隕石】
・小城隕石：1741年、現在の佐賀県小城市に4個の大きな隕石が落下し、2個が明治まで残っていて、明治に鍋島直虎がイギリスに寄贈した。残る1個は米軍の空襲によって行方不明となった。・東公園隕石：福岡県に落下した。これも日本国内では行方が分からなくなっている隕石。大英自然史博物館で明治時代に収集されてから100年以上保管されていたものが初めて公開される。

・薩摩隕石：1886年に鹿児島県に落下したは空中で分裂して隕石雨となり、10数個の破片が拾われた。国立科学博物館でも小さな標本を所蔵展示しているが、25kg以上という最大の標本が初めて。

【ピルトダウン人頭蓋骨捏造事件】 1912年イングランドのピルトダウンという町の周辺で、古生物学者のアーサー・スミス・ウッドウォードとアマチュア考古学者チャールズ・ドーソンが「ピルトダウン人」を発見し、類人猿と人類の進化の「ミッシング・リンク」を埋めたとして有名になった。その後に発見された化石原人すなわち「ミッシング・リンク」では「脳の発達が先行していて、顎の発達は最後である」ものばかりだったので、「ピルトダウン人がおかしい」という意見が出てきた。

1953年のフッ素年代測定によりオランウータンの下顎骨と現代人の頭蓋骨を組みあわせた真っ赤な偽物と判明した。40年間、世界中の科学者達がこの「ピルトダウン人」を、ネアンデルタール人やクロマニヨン人たちと同じく重要な資料と位置づけて、研究を続けてきた。犯人探しとしては「ドウソン単独犯行説」が有力であるが、その過程では、当時付近に住んでいた「シャーロック・ホームズ」のコナン・ドイルも疑われたという。

一昨年のDNA鑑定でも、これが「世紀の捏造事件」だったことが証明されている。このようなマイナスイメージを持つピルトダウン人の資料一式も捨てずに今後に伝えている。これはロンドン国立美術館の地下に「贋作ばかり集めた部屋」が置かれて研究の対象となっていることと同じである。

篠田謙一副館長は次のようにまとめられた。収集の主役は、①大金持⇒②国家⇒③国民全体に移って来た。キリンの頭部を集めたロスチャイルド家の息子ウォルター・ロスチャイルドは「大金持ちの例」であり、呪われたアメジストをイギリス政府に寄贈した所有者の娘は「国家の役割」に期待したのである。「国民全体の例」としては、「イッカク頭骨収集のための国際的ネットワーク形成」が挙げられる。日本で盛んな「アマチュア昆虫採集」もこのようなネットワーク形成の基盤となるかもしれない。美術散歩　管理人　とら

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草間彌生　七色の富士

April 23, 2017, 6:07 am

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2017年4月23日の12時45分から、90分のNHK・BSプレミアムでドキュメンタリー「草間彌生　わたしの富士山～浮世絵版画への挑戦」の再放送を見た。

初回放送は2015年1月1日（元旦）だったとのことである（参考）。

今回、水玉や網目模様でおなじみの前衛芸術家・草間彌生が浮世絵版画に初挑戦した。テーマは世界文化遺産に登録された日本の象徴「富士山」である。

この《草間富士山版画》を制作したのは、浮世絵版画職人集団「アダチ版画研究所」であった。

最初に、草間は大きな「富士山」の油彩画を描く。草間は椅子から立ち上がり、大画面の周囲を動きながら、富士の稜線・頂上の噴火口・裾野の家々を描き、空には笑う太陽を加え、青空を大小さまざまな白い水玉で埋めていく。

悠々と裾野を広げて聳え立つ独立峰の存在感や溢れる生命力が伝わってくる油彩画が出来上がった。

草間は、完成した大画面油彩画《富士山》を「アダチ版画研究所所長」に見せて、《草間富士山》木版画制作の可能性を聴く。

「アダチ版画研究所」は、「木版画の大きさ限界」について草間に説明し、できるだけ大きい版木や紙を用意して、木版画《草間富士山》30.3×90.0 cmを制作することとなった。

番組では、この木版画制作の詳細が紹介された。

表情の違う水玉を彫りわける彫師の腕の見せどころであるが、この水玉の彫りは若手彫師の岸に任された。青空を覆い尽くす14,685個に及ぶ草間のトレードマークの水玉が彫りあがった。

富士山の輪郭や笑う太陽は別の彫師が担当した。

人間国宝・岩野市兵衛が特別に漉いた、紗漉き最大限の大きさの和紙（越前生漉奉書）が用いられ、若手摺師の京増が調合した木版画独自の鮮やかな色彩で摺り上げた。

当初は、草間の大油彩画《富士山》を手本にした木版画《草間富士山》だけを制作するはずであったが、「アダチ版画研究所」の現場からの意見で色変わりの木版画《草間富士山》が試作された。「アダチ版画研究所所長」がおそるおそる草間に何枚かの色変わり版画を見せたところ、草間はその出来栄えに感心し、この《色変わり草間富士山》を制作することとなった。

制作された《色変わり草間富士山》は7色で、感動した草間が7色それぞれの色変わり版画に即興で詩を詠んだ。

赤富士：生命は限りもなく、宇宙に燃え上って行く時青富士：宇宙や人類の生命のありか縁富士：命の限り愛してきたわたしの富士山のすべて桃富士：やさしさに溢れた万物はわたしの心を打った茶富士：富士山、わたし大好き黄富士：永遠に輝く我が命、この人間愛は何憶後年も滅びる事はない黒富士：われわれの魂の沈んでいった果てに、この黒々とした山はすべてを愛に包んでしまう《色変わり草間富士山》は、各色限定120部が販売され、価格は絵のみ¥800,000（税別）・専用額付き¥840,000（税別）ということだったが、既に予約で完売したとのことである。

美術散歩　管理人　とら

桃山孤高の巨匠 海北友松　＠日曜美術館

April 24, 2017, 3:05 am

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今回の「海北友松展」は京都国立博物館で開かれていて、東京国立博物館には巡回しない。その点は「狩野永徳展」や「狩野山楽・山雪展」と同様であるが、今回は①自分の「海北友松関連ブログ記事」を整理し（ブログ）、②「海北友松の代表作」をまとめ（ブログ）、③「海北友松展図録」を宅急便で取って勉強し（ブログ）、④「日曜美術館：桃山 孤高の巨匠 海北友松」で知識を整理することとした。

番組は海北友松の到達点とされ、今回米国から”奇跡の帰還＝約60年ぶりの里帰り”を果たしている《月下渓流図屏風》（米国・ネルソン・アトキンス美術館蔵）からスタート。

海北友松は、1533年、近江・湖北で誕生。
友松は、初め狩野永徳に師事した。《菊恵童図屏風》は友松の狩野派時代の作品。永徳の作品と比較すると岩の峻法などに類似が認められる。1573年、織田信長は浅井家を滅ぼしたが、この時兄・大膳は戦死し、41歳の友松の将来に大きな影響を与えた。「武家出身だった海北友松は間違って芸術家になった」とのこと。友松は建仁寺方丈に多数の襖絵を描く以前に、建仁寺塔頭に襖絵を描いている。番組中に登場したのは霊洞院の《花鳥図襖》と禅居庵の《松竹梅図襖》である。

《花鳥図襖》霊洞院松竹梅図襖　松に叭々鳥図》1597年　禅居庵《松竹梅図襖　梅図》1597年　禅居庵
日本画家・山口晃と京都国立博物館学芸部長・山本英男の説明を聞く司会の井浦新と高橋美鈴。次に登場したのは、有名な「建仁寺方丈水墨障壁画」。

《竹林七賢図》部分《花鳥図》部分《雲龍図》山口晃の説明を聞く井浦新。室内を暗くしてみるともの凄い。画面上部からの墨の滴りも良く分かる。時の権力者・豊臣秀吉も海北友松のことは知っていたようで、「1594年、上杉景勝が秀吉を自邸に招待した際に、秀吉から友松筆の《濃彩松鳥画屏風一双》を賜ったとの記述が「歴代年譜　景勝公」に残っている。《浜松図屏風》宮内庁三の丸尚蔵館蔵　公家好みの洗練された画。《網干図屏風》宮内庁三の丸尚蔵館蔵　こちらも公家好み。次は、「友松の妙心寺屏風」3点。

《花卉図屏風》右隻↓、左隻↓↓、同拡大↓↓↓《寒山拾得・三酸図屏風》右隻↓、左隻↓↓《琴棋書画屏風》晩年の作品が出てくる。

《禅宗祖師図押絵貼屏風》京都国立博物館蔵《放馬図》奈良・松尾寺蔵《白鷺図》根津美術館蔵最後に《月下渓流図屏風》に戻って仔細に見た。「蒲公英」が描かれている。「土筆」も描かれている。靄に煙る山深い渓谷には、豊かな雪解け水が流れ出す。左上の空には朧月が浮かび、その優しい光が渓流をはじめ、松や白梅、椿や土筆、蒲公英などを淡く照らし出している。河合正朝氏がコメントとして古今集の和歌を引用されたように、この画の詩情には感嘆せざるをえなかった。古今集・巻1・春歌上・41 凡河内躬恒　春の夜、梅の花をよめる「春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる」美術散歩　管理人　とら

海北友松と亀井玆矩

April 25, 2017, 12:09 am

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今回の「海北友松展＠京都国立博物館」に《飲中八仙図屏風》（六曲一隻、右隻分が失われているため左隻のみ）↓と《楼閣山水図屏風》（六曲一双）↓↓・↓↓↓の2点の重要文化財が出展されている。

この2点がいずれも亀井玆矩のために制作されたものであることはそれぞれに「為書」がされていることで分かる。此図之事任御好染形也因幡鹿野館可有翫見御消息一入振肘畢　慶長七年曜月哉明　江北海北友松書之　【註】慶長七年＝1602年、曜月＝10月、哉明＝3日・右隻為書：惟高亭之麻柳篷舟承御望穢白楮者也　晋奉　亀井武蔵守様
・左隻為書：進上亀井武蔵守様　是古寺之廊門縁樹図依御好染玄墨者也

海北友松が為書をしたのは上記の2点しかないことから、二人がきわめて親しい関係だったことが分かる。

亀井玆矩は尼子氏の家臣湯永綱の子。尼子氏再興を図る山中鹿之助幸盛に従い各地を転戦したが、尼子氏滅亡の後は、幸盛との緊密な関係から、幸盛の養女（亀井秀綱の次女）を娶り、亀井氏を名乗ってその名跡を継いだ。その後、織田信長や豊臣秀吉の配下で活躍し、秀吉からは天正9年（1581）に鹿野城を与えられ、文禄慶長の役にも参戦した。江戸幕府下では、農業や銀山の開発、用水路開発などに手腕を振るう一方、シャムと朱印船交易を行うなど世界的視野を有する実業家でもあった。

津和野亀井家の現在の当主（16代）亀井茲基氏は私の知人であり、高橋由一作《西周像》についての記事をこのブログに書いている。

【参考】亀井家
亀井永綱　湯惟宗の子
亀井安綱　亀井永綱の子
亀井秀綱　亀井安綱の子　延徳3年（1491） - 永禄9年（1566）
亀井利綱　亀井安綱の子
亀井茲矩　湯永綱の長男　亀井秀綱の養子　鹿野藩初代藩主　弘治3年（1557） - 慶長17年（1612年）
亀井政矩　亀井茲矩の次男　鹿野藩2代藩主　津和野藩初代藩主　天正18年（1590） - 元和5年（1619）
亀井経矩　亀井政矩の子
亀井茲政　亀井政矩の次男　津和野藩2代藩主　元和3年（1617） - 延宝8年（1681）
亀井政直　亀井茲政の長男　正保2年（1645年） - 延宝7年（1679年）
亀井茲親　亀井茲政の三男　津和野藩3代藩主　寛文9年（1669） - 享保16年（1731年）
亀井茲長　亀井茲親の長男　元禄元年（1688年） - 享保11年（1726）
亀井茲延　亀井茲長の長男　亀井矩致、茲満の養子　津和野藩5代藩主　享保7年（1722） - 宝暦6年（1756年）
亀井茲胤　松平頼明の五男　亀井茲延の養子　津和野藩6代藩主　享保11年（1726） - 宝暦2年（1752年）
亀井茲休　亀井茲胤の長男　亀井矩貞の養子　寛延3年（1750） - 明和3年（1767年）
菅沼定好　亀井茲親の子
亀井茲満　亀井茲親の六男　津和野藩4代藩主　正徳3年（1713年） - 享保21年（1736年）　没歳：24歳
亀井矩貞　菅沼定好の次男　亀井矩致、茲胤の養子　津和野藩7代藩主　元文4年（1739年） - 文化11年（1814年
亀井矩賢　亀井矩貞の長男　津和野藩8代藩主　明和3年6月（1766） - 文政4年（1821）
亀井茲尚　亀井矩貞の三男　亀井矩賢の養子　津和野藩9代藩主　天明6年（1786年） - 天保元年（1831年）
亀井茲方　亀井茲尚の三男　津和野藩10代藩主　文化14年（1817） - 弘化3年（1846）
阿部正身　亀井茲尚の四男　阿部正暠の養子　佐貫藩7代藩主　文政元年（1818年） - 慶応4年（1868年）
亀井茲監　有馬頼徳の六男　亀井茲方の養子　津和野藩11代藩主　文政8年（1825） - 明治18年（1885年）
亀井茲明　堤哲長の三男　亀井茲監の養子　文久元年（1861） - 明治29年（1896年）
亀井茲常　亀井茲明の子　明治17年（1884） - 没年不詳
亀井茲建　亀井茲常の子　明治43年（1910） - 平成4年（1992）
亀井茲基　亀井茲建の長男　昭和11年（1936）‐
亀井久興　亀井茲建の三男　昭和14年（1939） ‐
亀井亜紀子　亀井久興の長女　昭和40年（1965）-

美術散歩　管理人　とら

琴棋書画　＠海北友松展

April 26, 2017, 4:46 am

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「琴棋書画」は「文人必須四教科」として好まれた画題である。中国では士大夫の身につけるべきものとされた「四芸」であり、わが国でも室町時代以後、掛物・襖絵 ・屏風絵 などの題材として盛んに描かれた。

海北友松が最初に師とした狩野永徳の《琴棋書画図襖》では、「琴」・「棋」・「書」・「画」のそれぞれが非常に分かりやすい表現となっている。

一方、海北友松の「琴棋書画」には、かなり捻ったものがあり、中には理解困難なものまである。

今回、海北友松の「琴棋書画」の「琴」・「棋」・「書」・「画」のそれぞれについて、自分なりの解釈を述べてみた。

別な解釈をされる方もあろうかと思う。その場合には、（非公開）コメントでご教示いただけば幸甚です。

１．琴棋書画図襖（建仁寺塔頭光院）狩野永徳

琴：琴の音を高士や童子が聞き入っている

棋：楼台で囲碁を打つ高士2名。見学者、外を見る者、茶を運ぶ童子も描き込まれている。書：高士たちが書を読んでいる 画：東屋の高士が画を写している。２．琴棋書画図（建仁寺塔頭霊洞院）海北友松

琴：景色を眺める高士の脇に琴が置かれている。書：書が積まれた机に肘をついて、童子が居眠り棋：碁盤が置かれている。画：童子が画軸を運んでいる。３．琴棋書画図（建仁寺大方丈）海北友松

琴：童子が琴を運んでいる。書：童子が書を読み、二人の高士が聞いている。棋：囲碁の対戦相手が外に気を取られてしまった。画：準備ができました。４．琴棋書画図屏風（妙心寺）海北友松

琴・棋：高士が碁盤の上に置いた琴に寄りかかって居眠り。書：高士が樹に寄りかかって手にした文を読む。
画：高士が画軸を捧げ持ち、童子が画軸を肩にかけて運んでいる。５．婦女琴棋書画図屏風（東京国立博物館）海北友松

琴：童子が琴を肩にかけて運んでいる。棋：碁盤が置かれている。書：女性が樹に寄りかかって文を読んでいる。
画：女性たちが画を広げて鑑賞。６．琴棋書画図屏風（フリーア美術館）海北友松

フリーア美術館の画像検索システム「オープンF|S」を試してみたが、"KAIHOKU YUSHO"では別の画家の作品がヒットしてきたので、図録掲載のモノクロ画像を使わせていただいた。

棋：高士が囲碁を楽しみ、高士と童子が観戦している。（右隻）
画：童子が高士に画軸を渡している。（右隻）琴：楼上の高士が琵琶を奏でている。（左隻）
書：3人の高士が書を読んでいる。（左隻）美術散歩　管理人　とら

季節の花　＠自宅の庭　2017/4/27

April 27, 2017, 4:12 am

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前回(2017/04/19)の定点観測結果はこちら。前々回(2017/04/14)はこちらである。

比較すると、新顔がいくつか加わり、いくつかの花が退場している。

海老根

皐月躑躅諸葛菜釣鐘水仙花韮蔓桔梗鈴蘭美術散歩　管理人　とら

ランス美術館展　その1　＠損保ジャパン日本興亜美術館

April 27, 2017, 10:38 pm

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今回の展覧会のサブタイトルが「フランス絵画の宝庫　ダヴィッド、ドラクロア、ピサロ、ゴーギャン、フジタ・・・」となっているように、なんでもありの展覧会だと思って、期待しないで見に行った。

ところが、ランスはレオナール・フジタゆかりの地とあって、フジタの作品が充実していた。

展覧会の構成は次の通り。第1章　国王たちの時代
第2章　近代の幕開けを告げる革命の中から
第3章　モデルニテをめぐって
第4章　フジタ、ランスの特別コレクション今回はこのうち第1～3章を「その1」で述べ、第4章は別に「その2」に書くこととする。

第1章　国王たちの時代　バロック様式とロココ様式

1589年、ブルボン朝のアンリ・ド・ナヴァールが王位に就き、アンリ4世となってブルボン朝を開いた。アンリ4世はナント勅令によって宗教戦争に終止符を打ち、宰相リシュリュー枢機卿やマザラン枢機卿などの有能な政治家がフランスを立て直し、ヨーロッパにおける実権を握った。15∸16世紀のヨーロッパ絵画はイタリアのルネッサンス画家・カラヴァジェスキ画家、さらにはフランドルのレンブラントやルーベンスなどが覇権を握っていたが、17－18世紀になるとフランス美術も独自のスタイルを確立した。17世紀においては、ルイ14世の絶対王政の下にバロック美術が発展し、18世紀にはルイ15世の下に優美なロココ美術が大勢を占めたのである。

・作者不明（フランス）《ルイ13世》17世紀：ルイ13世はブルボン朝2代目の王。この時代、宰相リシュリューなどの有能な政治家が活躍して、絶対王政の基礎が作られた。

・フィリップ・ド・シャンパーニュ（に基づく）《ジャン＝パティスト・コルベ―ル》17世紀：コルベールはルイ14世に仕えた有能な政治家。この画はバロック様式で描かれている。・作者不明（フランス）《ルイ15世の娘。アデライード夫人の肖像（と思われる）》18世紀：アデライードはルイ15世の4女。・リエ＝ルイ・ペラン＝サルブルー《ソフィー夫人（またの名を小さな王妃）の肖像》1776年：ソフィーはルイ15世の6女で、アデライードの妹。この画はロココ様式で描かれている。第2章　近代の幕開けを告げる革命の中から

1789年に始まったフランス革命により絶対王政が終わり、フランスは民衆が政治を行う国となった。王族や貴族が力を失ったことで、優美なロココ様式に代わって。知的で理性的な「新古典主義」が誕生した。19世紀になると、情熱的で自由な表現を求めて「ロマン主義」が登場した。19世紀半ばには目に見える世界をありのままに描いた「写実主義」が流行した。

・ジャック＝ルイ・ダヴィット（および工房）1793年：ダヴィットは「新古典主義」を代表する画家。これはブリュッセル王立美術館蔵《マラーの死》の再制作作品。革命家マラーの暗殺をテーマにしたこの作品は人気が高く、ダヴィッドの監督下に工房で多くの同一構図作が描かれた。右側の箱には「私を貶められぬが故に、私を暗殺した」と記されている。・ウジェーヌ・ドラクロア《ポロニウスの亡骸を前にするハムレット》1854∸56：ドラクロワは「ロマン主義」を代表する画家。デンマーク王子ハムレットは、相手の王と間違えて宰相ポロにクスを殺してしまった。シェイクスピアの悲劇「ハムレット」の一場面である。・エドアール＝デビュッフ《ルイ・ポメリー夫人》1875：シャンンパーニューメゾン（シャンパン製造会社）である「ポメリー」の創業者長男夫人の肖像画。・カミーユ・コロー《川辺の木陰で読む女》1965∸70：コローは19世紀を代表する「風景画家」で、銀灰色の色調が素晴らしい。・ギュスターヴ・クールベ《彫刻家マルチェロ（カスティリオーネ＝コロンナ公爵夫人）1870：クールベは「写実主義」を代表する画家。
・ウジェーヌ・ブーダン《ダンケルク周辺の農家の一角》1889第3章　モデルニテをめぐって

1870年代から198年代にかけての「印象派」と19980年代から1890年代にかけての「ポスト印象派」の時代である。

・アルフレッド・シスレー《カーディフの停泊地》1897：ポメリーの経営者アンリ・ヴァニエの所蔵作品。ウェールスに旅行した際に「印象派」のシスレーが描いた画。・カミーユ・ピサロ《オペラ座通り、テアトル・フランセ広場》1898：これもポメリーの経営者アンリ・ヴァニエ所蔵の「印象派」作品。・ポール・ゴーギャン《バラと彫像》1889：ゴーギャンは「ポスト印象主義」を代表する画家。この画が描かれたのはル・プルデュの宿屋の台所。薄茶色の机ならびに暗赤色と褐色に分割された壁面の対比が目立つ。後ろ向きの暗青色の人形はゴーギャンがマルチネス島で制作したものであるが、宿代の代わりに宿の女将に取られてしまった。・モーリス・ドニ《魅せられた人々》1907美術散歩　管理人　とら

ランス美術館展　その2　＠損保ジャパン日本興亜美術館

April 29, 2017, 12:37 am

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「ランス美術館展　その1　＠損保ジャパン日本興亜美術館」のブログ記事はこちら。

これは「ランス美術館展　その2」で、「第4章　フジタ、ランスの特別コレクション」に関しての記事である。

この章は、「エコール・ド・パリ」を代表する画家レオナール・フジタ（1886-1968）の晩年にスポットを当てている。

第二次大戦中に戦争記録画を描いたことで画壇から糾弾を受けた藤田嗣治は、1950年にフランスへ戻り、1955年にフランス国籍を取得した。

1959年には、シャンパーニュメゾン（シャンパンを作る会社）「G.H.マム」の会長ルネ・ラルーに招かれてランスを訪れた。ラルーは、G.Ｈ.ラムが作っているシャンパーニュ「コルドン・ロゼ」（現在のマム・ロゼ）のミュズレ（コルク栓に被せる金属の蓋）ためのバラの花の画を藤田に頼んでいた。

藤田は、ランス大聖堂で、カトリックの洗礼を受け、「レオナール・フジタ」という洗礼名を授かった。

ランスには、フジタ晩年の代表作である「平和の聖母礼拝堂」がある。彼は、この礼拝堂の聖母マリアとキリストの物語をテーマににした壁画を描くだけではなく、建物やステンドグラス、彫刻、庭などもデザインし、自らの画業の集大成とした。 礼拝堂を建てるための場所と資金を提供したのは、「G.H.マム」の会長ルネ・ラルーだった。

【油彩画】

・《好色》20世紀後半　油彩・カンバス
・《若いアフリカ女と子供》1932　油彩・カンバス
・《フジタ、7歳》20世紀　油彩・カンバス：家族写真から藤田嗣治だけを抜き出して油彩画とした作品。
・《ヴァイオリンを持つこども》1923　熊本県立美術館蔵　油彩・カンバス・《マンゴー》1932　油彩・カンバス
・《猫》1963　油彩・カンバス・《授乳の聖母》1964　油彩・カンバス：中央に啄木鳥の巣を持ち、幼子イエスに授乳する金髪の聖母マリア。中央にはいろいろな動物とその子どもが多数描かれている。《奇跡の聖母》1964　油彩・カンバス：金髪の聖母マリアが視力を失った女性の眼に手を当て、周りにはマリアの奇跡を待つ病人が描かれている。・《聖母マリア》1965　テンペラ・油彩
・《サロメ》1965　テンペラ・油彩
・《キリスト》1965　テンペラ・油彩
・《聖ペテロ》1965頃　テンペラ・油彩
・《少女》1957　油彩・ガラス・鉛
・《十字架降下》1927　ひろしま美術館　油彩・カンバス：この美術館には藤田の《受胎告知》と《三王礼拝》も所蔵されている。・《マドンナ》1963：映画「黒いオルフェ」で有名になったアフリカ系アメリカ人女優であるマルべッサ・ドーンを中央に、周囲に15人のアフリカ系ケルビムを描いている。これは今回の展覧会のメイン・ヴィジュアルになっている。・《キリストの顔》1966熊本県立美術館蔵　フレスコ・カンヴァス【平和と聖母礼拝堂のための素描】カルトンあるいは大下絵

１．平和と聖母礼拝堂内部（フレスコ画）の写真パネル

・《復活》
・《最後の晩餐》
・《十字架を背負うキリスト　ゴルゴタの丘》
・《降誕》
・《洗礼者ヨハネによるイエスの洗礼》/《聖マルタ》
・《十字架降下》
・《聖カエキリア》/《手足の不自由な人を癒すキリスト　キリストの奇跡》
・《受胎告知》/《祈る若い女》
・《七つの大罪》
・ステンドグラス　
・ステンドグラス《聖職者と死》
・ステンドグラス《聖ベアトリクス》２．平和と聖母礼拝堂内部（フレスコ画）の素描

・《聖職者と死》黒鉛筆・グアッシュ
・《十字架を背負うキリスト　ゴルゴタの丘》木炭
・《聖ベアトリクス》木炭
・《十字架のキリスト》木炭・《聖ベアトリクス》木炭
・《聖ベアトリクス》インク・水彩
・《死せるキリストを嘆く人々　十字架降下》木炭・《使徒たちと子ども》木炭
・《復活》木炭
・《夫婦》木炭
・《七つの大罪》木炭：暴飲・色欲・強欲・怠情・傲慢・嫉妬・憤怒

美術散歩　管理人　とら

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狩野即誉の《琴棋書画図》

April 30, 2017, 12:58 am

≫ Next: 広重の「諸国六十余州旅景色」　＠日曜美術館

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北陸の実家の蔵から狩野即誉筆の六曲一双の屏風が出てきた。

落款の位置を見ると、右隻が《琴棋書画図》で、左隻が《竹林七賢図》である。

最近、安土桃山時代の「海北友松」の《琴棋書画図》と「狩野永徳」の《琴棋書画図》の相違について、ブログ記事（こちら）を書いたが、それらと比較して江戸時代狩野派の《琴棋書画図》がどのように描かれているかを調べてみた。狩野即誉は、江戸中期の画家で「愛宕下狩野家」の祖。狩野友益の次男で「神田松永町狩野家」の伯円方信の弟に当たり、別家したものと思われる。父は「神田松永町狩野家」宗知の子で、狩野長信の門人で、加賀金沢藩に仕えたとも云われる。父の師・狩野長信は狩野松栄の四男で、狩野永徳の弟。屏風の右下隅に「狩野即誉筆」という署名があり、朱文方印が捺されている。ちなみに左隻《竹林七賢図》の署名・捺印は屏風の左下隅にある。「琴」：　1人の高士が奏でる琴の音を聴きながら、前に坐っている別の高士は外の景色に気を取られているようだ。
同様な画は、海北友松の「琴棋書画図（建仁寺大方丈）琴」にもあった。「棋」：　囲碁を対局する高士2名と観客の高士1名。観客の高士は、次の「書」の手習い中の息子にエールを送っているようだ。「書」：　筆を持って書き方を教える母親と習う息子。満開の白梅は、「学問の神様」菅原道真の「飛梅伝説」と関係があるのかもしれない。「画」：　画軸を運んでいる童子。ここにも満開の白梅が描かれている。江戸時代狩野派の《琴棋書画図》は、狩野永徳のそれほどは固い画一的なものではなく、海北友松のそれに近いユーモアのあるもののように思われた。

美術散歩　管理人　とら

広重の「諸国六十余州旅景色」　＠日曜美術館

April 30, 2017, 7:36 pm

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今週の日曜美術館は、広重の「諸国六十余州旅景色」だった。以下はそのメモである。

司会の大橋美玲は「諸国六十余州旅景色」は知らなかったとのことだが、井浦新はよく知っていて、自分の旅にも利用しているとのこと。

わたし自身は「諸国六十余州旅景色」はよく知っており、人文社発行の「広重の諸国六十余州旅景色」も持っている。以下に挙げた作品番号はこの本に依るものである。

ゲスト：大久保純一国立歴史民俗博物館教授ほか

１．日本三景

・丹後　天の橋立　（京都府）38：広重は、「イザナギノミコトが自分の住む天上とイザナミノミコトの住む地上を行き来するために梯子をかけたが、これが倒れて天の橋立となった」という伝説を知っていたのだろう。橋立が天に向かって延びている。鮮やかな藍の海、打ち寄せる波の白、松林の緑が印象的である。・陸奥　松島風景　富山眺望之略図　（宮城県ほか）28：標高116.8ｍの富山から松島湾を眺めた俯瞰図。ナコメ・月星シマ・白ハマ・サル林・石ハマ・ハナブシ・小町シマ・・・豊島の名を執拗に書き込んでいる。松尾芭蕉が松島の美しさに絶句して「松島や　ああ松島や　松島や」と詠んだというのは本当ではないらしい。・安芸　厳島　祭礼之図　（広島県）50：平清盛以来の「管弦祭」の御座船が大鳥居に戻ってくるところが描かれている。遠景をモノクロとし、夜の雰囲気を出している。２．絶景

・阿波　鳴門の風波　（徳島県）55吸い込まれそうな渦潮の迫力に目が行くが、岩に当たって舞い上がる波しぶきや寄せ手は返す波も描かれている。・美濃　養老ノ瀧　（岐阜県）23：落差32ｍの大瀧で、瀧の中に見える垂直の模様は版木の模様を利用したものである。・豊前　羅漢寺下道　（大分県ほか）61：耶馬渓の青の洞門が描かれている。これは江戸時代に諸国修行の僧。禅海が鑿と槌だけで30年かけて完成させたものである。実際にこの同門を通る人々が描かれている。岩山がうねるように動いているように見えるのが印象的である。３．日常の情景

・江戸　浅草市　（東京都）17：歳の市で賑わう浅草寺の境内が描かれている。羽子板などの正月用品、桶や籠などの生活用品が並んでいるのが見て取れる。・土佐　海上松魚釣　（高知県）58：鰹は網で捕ると傷つきやすいので、現在も一本釣りが行われている。桶に入れてある生きたイワシを舟縁りから海に放ち、これを目指して舟に近寄ってくる鰹を一本釣りする。「日本山海名産図会」を参照している。何艘もの舟を重ねて配置し、遠近感を出すようにしている。
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【コラム：広重は現場を訪れていたか？】

A．現場を訪れていた場所

・甲斐　さるはし　（山梨県）14：猿橋は、両岸から肘木を重ね、せり出すように連ね支点としているところが「奇橋」といわれる所以で、橋脚がなくまるで宙に浮いているように見える、広重は旅日記に「猿はしまで行道二十六町の間、甲斐の山々遠近に連なり、山高くして谷深く、桂川の流、清麗なり。十歩二十歩行間に、かはる絶景、言葉にたえたり、拙筆に写し難し」と書いていた。番組の小池レポーターがボートに乗って桂川から見上げ版画の遠山が見えないことに気付き、一方猿橋の上からは遠山が見えるので、広重は両視点から一つの作品としたことを証明していた。ゲストの菅原さんのコメントでは、「近年大英博物館で広重のスケッチ帖が出てきたが、その中には広重が実際に旅して描いたスケッチがある」とのこと。

・上野　榛名山雪中　（群馬県）26：スケッチ帖を見ると、完成作に描かれている橋やお堂はスケッチにも認められる。・播磨　舞子の浜（兵庫県）45：手前の松は大きく、遠景の松や人物は小さく、その強い対比によって遠近感が表現されている。画面左手前の太い松はいったん画面の外に出てその上部が画面内に戻ってくる。観者の視線はその間の海・浜辺から遠景の帆掛け船へと」誘導される。B．広重が行ったことがない場所

・土佐　海上松魚釣　（高知県）58：「日常の状景」の項で述べたように、鰹の一本釣を題材としたもので、「日本山海名産図会」を参照している。

・伊予　西条　（愛媛県）57：「山水奇観」を参照しているが、それには空の雁のむれ、帆船の大きな帆は描かれていない。このように近景を大きく描くことは、「名所江戸百景」で多用されている。・薩摩　坊ノ浦　双剣石　（鹿児島県）67：小舟に乗った客が高さ27ｍと21ｍの奇岩を見上げている、「山水奇観」の遠景に「雙剣石」と名入れして小さく描かれているが、広重は「広重マジック」によって近景として大きく描いている。・親しらず　（新潟県）35：「山水奇観」を参照しているが、視点を少し変えている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

４．雪月花

・花：因幡　加路　小山　（鳥取県）40　湖山池（鳥取県）を描いたもので、手前の松はそれほど目立たないが、満開の桜の艶やかさが印象的である。・月：備後　阿武門　観音堂　（広島県）49：岬の突端の岩場に建てられた盤台寺の観音堂が、満月の朧月夜の優しい光の中に浮かびあがっている。・雪：喜山寺　壱岐・志作（長崎県）68．　あまり雪の降らない温暖な地の雪景色。暗い空をバックに粉雪が静かに降り、山の松にも雪が積もっている。５．雨　
・美作　山伏谷（岡山県）46：多数の太くてしなる斜線によって暴風雨であることが分かる。旅人は舞い上がる笠を追いかけ、飛んでいこうとする笠を押えている。・伯耆　大野　大山展望　41：田植えの状景。小糠雨は、白雨あるいは慈雨で、暗い山の背景から浮き立っている。女性の表情が明るいことが印象的である。アダチ版画研究所の摺師・京増与志夫さんによると、「白雨は⒛回摺りの最後に胡粉を使って行う。後摺の作品では黒い雨としているが、それでは慈雨でなく豪雨となってしまう」とのことである。

大久保純一教授のコメントでは、「広重は、東海道五十三次「庄野」や江戸名所百景「大江戸あたけ」など雨の名作が多い」とのこと。

【関連展覧会】　広重ビビット　原安二郎コレクション2016年4月29日（金・祝）～6月12日（日）サントリー美術館
2016年7月16日（土）～9月4日（日）ふくやま美術館
2016年9月28日（水）～10月17日（月）大阪髙島屋
2016年10月29日（土）～12月11日（日）福島県立美術館
2017年3月18日（土）～5月21日（日）新潟市美術館
2017年9月16日（土）～10月29日（日）北九州市立美術館 分館 美術散歩　管理人　とら

歌川国芳　絵画力　＠府中市美術館

May 2, 2017, 4:28 am

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今年のＧＷは、4月29～30日と5月3～5日の2群に分かれているが、両者を合わせると長期ＧＷとなる。その中間は5月1～2日は多少は空いていると思い、府中市美術館に出かけることとした。5月1日には、突然の雷雨が発生したため、本日5月2日に車で往復してきた。

展覧会は「歌川国芳　絵画力」である。

府中市美術館では、2010年春に「歌川国芳∸奇と笑いの木版画」が開催され、私も行って来て図録も残っている（ブログ）。

その後「国芳ブーム」は世界的なものとなった。今回の展覧会は国芳人気の理由を探りつつ、現代人の眼で楽しもうとするものだった。
見終わってから上天気の館外でランチを楽しんだ。あたりは風薫り、緑濃き5月である。お気に入りは無数にあったが、ここでは《西塔鬼若丸》だけを挙げる。若き弁慶が鯉と闘っているところである。「鬼若丸」とは弁慶の幼名だが、比叡山西塔に預けられていたため、「西塔鬼若丸」の名で呼ばれている。
この美術館は観客に対していろいろなサービスを提供してくれる。その1例は（↓）のような「スタンプ画作り」である。会期中に登場した作品《猫の左仮》が、その関連作品と並べて展示されていた。好き日の佳き展覧会だった。

この展覧会は5月7日（日）まで。お勧めします。ただし、5月3～5日のGW中は、かなり混んでいるでしょう。5月2日の今日も結構の賑わいだった。

美術散歩　管理人　とら

アドルフ・ヴェルフリ　二萬五千頁の王国　＠東京ステーションギャラリー

May 2, 2017, 4:56 pm

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今回の展覧会は、「アウトサイダー・アート」あるいは「アール・ブリュット」の芸術家として世界的に高く評価されているアドルフ・ヴェルフリ（1864∸1930）の日本における初の大規模個展で、74点の作品が見られるということで、内覧会に行ってきた。

「アウトサイダー・アート」とは、西洋の芸術の伝統的な訓練を受けていない人が制作した作品であるが、アートとして扱われているものを指す。フランス語の概念「アール・ブリュット」として提唱された当初は精神障害者や受刑者の作品を対象としたものであったが、概念が英訳されて広まる過程で、民俗芸術や独学の作家による作品も含むようになった。

日本の「アウトサイダー・アート」の主流をなすのは、障害者なかでも知的障害者の美術である。1950年代から山下清に対する世間の関心が高まったが、日本の美術界は長い間「アウトサイダー・アート」に対して沈黙していた。その後は、福祉分野でのアプローチが目立つようになり、1990年代から「アウトサイダー・アート」・「アール・ブリュット」の用語が日本に定着した。ちなみに、私が2012年12月に見た「山下清展」のブログ記事はこちらである。【アドルフ・ヴェルフリの生涯】アドルフ・ヴェルフリはスイスのベルンに、7人兄弟の末っ子として生まれた。石切りを仕事としていたヴェルフリの父は、アルコール中毒で犯罪を繰り返す男だった。

彼の母は一家を支えるために洗濯女として働いた。母親が病に陥ると、ヴェルフリは一家の故郷であるツェイヴィルに母親とともに戻った。ヴェルフリは住まいと食事を確保するために、集落の牧場で働くことを余儀なくされた。

彼が8歳の時に、母親は他界し、身寄りのなくなったヴェルフリは、いよいよ働き続けなくてはならなかった。しかし、こうした過酷な環境にも関わらず、ヴェルフリは正規の教育を修めた。

18才の時、ツェイヴィルの裕福な農家の娘と恋に落ちるが、彼女の両親に猛烈な反対を受け、二人が結ばれることはなかった。この事件を契機にベルンに戻ったヴェルフリは便利屋として働き始めた。都会の喧騒の中で孤独に苛まれたヴルフリは、若い女性との間で事件を起こし、牢で2年間過ごすこととなる。

釈放後も精神的健康は良くならず、悪化する一方だった。1895年、幼児暴行の廉で逮捕され、「ヴァルトー精神科病院」に収容されることが決定された。彼が死ぬまでこの病院からでることはなかった。

ヴェルフリの精神的疾患は、病院でも治らなかったが、彼は1899年（35歳）から病室で描き始めた絵に熱中し、生涯に25,000ページの作品を描いた。

現存する作品の中で最も若い日付を有するのは、1904年の作品である。この時点においては、ヴェルフリの作品は重々しい黒色に覆われている。彼の絵に色彩が現れるのは、1907年を待たなくてはならない。

この翌年、彼は《揺籠から墓場まで》と題された一大自叙伝に着手した。この物語は「聖アドルフ2世」と呼ばれる主人公すなわちヴェルフリが、さまざまな世界を旅する冒険譚である。余白を残さずに絵画・文字・音符で埋め尽くしたこの作品は、類例のない表現力・奇想天外な物語性と音楽への情熱に溢れている。自分の不幸な生い立ちを魅惑的な冒険譚に書き換え、理想の王国を築いて世界征服をたくらみ、音楽監督として作曲に没頭したのである。展示構成と主要作品は以下のようである。

第1章　初期作品(1904-1907)：　医師の診察記録によれば、ヴェルフリがドローイングを描き出したのは1899年である。ヴェルフリはまっさらな新聞用紙に描くモノクロの鉛筆画を「楽譜」と呼んでおり、「アドルフ・ヴェルフリ、シャングナウの作曲家」と署名した。この基本的要素は音符のない線譜にすぎないが、物語の情景は装飾的な枠組と文章によって描写されている。

・前掛けをした神の天使第2章　揺りかごから墓場まで(1908-12)：　これはヴェルフリが最初に手がけた叙事詩で、主人公の少年ドゥフィ（アドルフの愛称）が家族ととともに世界中を旅し、訪れた都市・山・川・島・地底などを詳細な記述と距離測定によって体系化した旅行記である。

・ネゲルハル（黒人の響き）第3章　地理と代数のノート(1912-16)：「揺りかごから墓場まで」がヴェルフリの過去を描いたものとすれば、これはヴェルフリの未来を描いたものである。ヴェルフリは、甥のルドルフに対し、ヴェルフリの死後「聖アドルフ資本財産」によって地球全土を買い上げて都市を形成し、「聖アドルフ巨大創造物」を作り上げる方法を教えている。地球の乗っ取りに成功したら、「巨大透明輸送機」に乗って宇宙に漕ぎ出し、旅を記録し、地名を変え、それらを我が物にしようと企んだのである。この物語は1916年7月23日に最盛期を迎え、ヴェルフリは「聖アドルフⅡ世」を名乗る。

・クリノリン、ギーガー＝リナ、糸つむぎ＝リナ、安楽椅子＝リナ、おとぎ話＝安楽椅子＝リナ、大＝大＝女神第4章　歌と舞曲の書(1917-22)：　ヴェルフリは「聖アドルフ巨大創造物」の祝祭曲として行進曲・ポルカ・マズルカを作曲する。曲はドレミファ音階で書かれており、コラージュが多用されている。

・聖アドルフ＝墓＝泉＝城第5章　葬送行進曲(1928-30):　文章とコラージュから成る「ヴェルフリ自身のレクイエム」である。

・無題（キャンベル・トマト・スープ）第6章　日々の糧のための作品・単一シートの作品(1916-30):　ヴェルフリは自作のドローイングを色鉛筆や煙草を交換しており、さらに病院職員や彼の作品を賞賛する人に対して販売していた。絵を売って得た金は「ヴァルダウ精神科病院」の看守長が管理し、必要なものを彼に買い与えていた。

・日本＝南の＝ハル（響き）、聖アドルフ＝リング この展覧会は、2017年1月11日～2月26日＠兵庫県立美術館、3月7日～4月16日＠名古屋市美術館を巡回して東京ステーションギャラリーに来ており、東京の会期は4月29日～6月18日です。美術散歩　管理人　とら

歌川国芳 21世紀の絵画力　その2　府中市美術館

May 3, 2017, 7:36 pm

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第１章　19世紀の国芳～国芳の仕事、10のポイント

1．凄みー新しい美の価値

・通俗水滸伝　豪傑百八人之一個
《両頭蛇解珍》再見。猟師の解珍は、激しい雨の中、竹林を背に、綱で敵将を締め上げて生け捕りにした。虎退治に関するトラブルから死刑になったが、脱獄して梁山泊の仲間になった人物である。

2．役者を追いかける
・四代目　中村歌右衛門　《江戸名所見立十二ヶ月の内　六月　山王御祭礼　団九郎兵衛》
・四代目　尾上梅幸　《今様七小町　関てら》
・二代目　市川九蔵 　《あㇵしま　市川九蔵》
・初代　坂東しうか　《初代坂東しうかの橋本屋白糸》
・初代　沢村訥升　《遇躬八芸　矢立平》
・十二代目　市村羽左衛門　《今様七小町　かよひ》・八代目　市川團十郎　《東都流行三十六会席　大音てらまえ白木権八》
・二代目　尾上菊次郎　《流行猫の戯　袂糞気罵責段》
・初代　岩井紫若　《見立俳優八剣士　犬阪毛野　岩井紫若》　
・朧月猫の草紙　山東京山著・歌川国芳画「朧月夜の草紙」初編（2）部分↓・垂涎の光景　《大山良弁之図》
・続・垂涎の光景　《猫の百面相》
《魚の心》再見。一目で役者と察しは付くが、特定は難しいものが多い。確実と思われるものは「鯛＝四代目中村歌右衛門」と「鰈＝初代紫若」。「河豚＝二代目尾上多見蔵」や「蛸＝嵐猪三郎」は説にすぎない。3．江戸の良さを教えてくれる画家

・水の町
《東都御厩川岸之図》再見。

・海と暮らし　
《東都名所　てつぽふづ》再見。

・月も木立も虹も夏雲も、江戸の風景
《東都名所　かすみが関》再見。

・意外な題材と構図
《東都三ツ股の図》再見。

・さらなるアングルの追求　東都富士見三十六景
《東都富士見百景　新大はし橋下の眺望》

4．子供のかわいらしさ

・子供を慈しむ
《子供遊五節供之うち　七月》

・かわいらしくて、役に立つ
《子供諸礼躾方　屏風の建てよう、障子明たてしやう》5．笑いの愛蔵版

・集まって別のものになる
《みかけㇵこㇵゐがとんだいゝ人だ》再見。

・一番面白いのは人間？
《百色面相》

・ばかばかしい
《木曾海道六十九次之内　守山　達磨大師》再見

6．歴史の物語

・牛若丸と鬼若丸　義経と弁慶
《和漢準源氏　花の宴　釈那王》

・源頼光
《大江山酒呑童子》

・俵藤太（藤原秀郷）
《竜宮城　田原藤太秀郷と三種の土産を贈》

・朝比奈義秀
《朝比奈義秀小人遊》（↓右）7．話題の見世物

・軽業師、早竹虎吉
《江戸ノ花木葉渡　早竹虎吉》

・生人形
《当盛見立人形之内　粂の仙人》

8．きわどい活動

・《駒くらべ盤上太棊》

・《墨戦之図》

・《源頼光公館土蜘作妖怪図》再見。右端で眠るのが源頼光。その背後に土蜘蛛が見える。頼光四天王も描かれている。この画は単に頼光の土蜘蛛退治を描いたのではないという説がある。頼光＝将軍家慶、四天王の一人・卜部季武＝水野忠邦、他の四天王＝役人たち、妖怪たち＝夢に出てきた天保の改革の被害者たち・・・とするのである。・《里すずめねぐらの仮宿》

・大名行列の謎
《朝比奈小人島遊》・《きたいなめい医　難病治療》

・《浮世又平名画奇特》部分↓・《土佐絵巻物之写》９．西洋画の異境

・大袈裟なポーズ
《誠忠義士肖像　中村勘助正辰》再見。

・討入の静けさ
《忠臣蔵十一段目夜討之図》再見。

・大袈裟なポーズ、ゆったりした気分
《二十四孝童子鑑　大舜》再見。

・異色を取り入れる
《近江の国の勇婦於兼》再見。

・こってり、かつ不思議な描写　唐土廿四孝
《唐土廿四孝　呉猛》

9．人気者、国芳

・後姿の人物
《浮世よしづ久志》部分↓・《流行逢都絵希代稀物》

・楽しみをくれた人
落合芳幾《歌川国芳死絵》


第２章　21世紀の国芳～何が私たちの心をつかむのか

1.「綺麗なもの」と「かわいいもの」の復権

・団扇絵にみるデザインと情感
《花鳥風月　ふねで見る月》・犬の愛おしさ
《当盛江戸鹿子　茅場町薬師》・小熊と遊ぶ金太郎
《列猛伝　足柄金太郎》

・おかしなもの
《道外化粧のたわむれ　花火》・金魚づくし
《金魚づくし いかだのり》

２．特撮ファンタスティック

・怪異のモチーフ
《大物之浦海底之図》

・《相馬の古内裏》再見。山東京伝による読本『忠義伝」に取材した作品で、源頼信の家老大宅光国と平将門の遺児で妖術を操る滝夜叉姫との対決の場面である。解剖学的にもかなり正確であるとの指摘もある生々しい骸骨が御簾を破って大きく半身を乗り出している。三枚続は、一図ずつでも構図が独立するように作画するのが通常であるが、その慣例をまったく意にとめない大胆さは国芳ならではの作品である。同様に三枚にわたって題材を大きく扱う構図法を取る作品には《讃岐院眷属をして為朝をすくふ図》《宮本武蔵と巨鯨》《鬼若丸と大緋鯉》が挙げられる。・嵐の海に現れた巨大魚
《讃岐院眷属をして為朝をすくふ図》再見。

・水を使った演出
《鬼若丸と大緋鯉》再見。

・合戦に煙は欠かせない
《信州川中島武田の正兵西条山を引かえし雨宮のわたりをこへ越後方甘粕近江守と戦ふ図》

・写真のように作る風景
《八犬伝之内芳流閣》再見。曲亭馬琴「南総里見八犬伝」の一場面。「考」の玉を持つ犬塚信乃と「信」の玉を持つ犬飼現八が、まだお互いのことを知らずに戦う場面である。・同じ画家とは思えない
《頼朝公蔓ヶ岡の神前において静御前のまひを見給ふ図》・建物も構図も壊す
《和田合戦義秀惣門押破》

・波に貼り付けた鯨
《宮本武蔵と巨鯨》再見

・江の島の裏へ回る
《相州江之島之図》・深い闇の作り方
《大物浦平家の亡霊》

・あり得ない派手さとリアリティ
《長門国赤間の浦に於て源平大合戦平家一門悉く亡びる図》部分↓・画面いっぱいの水面
《摂州大物浦平家ノ怨霊顕るゝ図》

・自然現象と抽象的な形
《周易八卦絵　雷雨》３．ヘタウマの巧み

・みんなわらっているようだ
《白面笑壁のむだ書》再見。

４．猫が結ぶ国芳と現代人の心

・猫で遊び、猫に遊ばれる
《風流六花撰　百合》・仕事の集大成
《其のまゝ地口　猫飼五十三疋》再見。

・あやしさと紙一重の動物
《日本駄右ェ門猫之古箏》

・集団演技《猫の当字　たこ》再見。題の枠の蛸も、猫に負けじと主張している。蛸にむしゃぶりつく猫が面白い。「こ」は「古」の崩しである。・魅惑の猫世界
《流行猫の曲手まり》

【註】その1はこちら

美術散歩　管理人　とら